「システムの構成」の解説
処理形態
業務活動を推進するためにコンピュータを利用するシステムの総体は「情報システム」と呼ばれます。情報システムの活用に際し、それぞれの目的に合わせた「処理形態」があります。主な処理形態の種類として以下のようなものがあります。
集中処理
1台のホストコンピュータがすべての処理を行うオンラインシステムの処理形態です。1台のホストによって管理されるため、設備や人員を集中させやすく、保守や運用管理、セキュリティ管理などが比較的行いやすいという利点があります。その反面、ホストコンピュータの導入に多額のコストを必要とし、また、ホストコンピュータが停止してしまうとシステムがすべて稼働できなくなるというリスクが伴います。
分散処理
ネットワーク上に接続された複数のコンピュータを使い、処理を分散して行う処理形態です。コンピュータの台数を増やすなどして機能を拡張することが容易であり、また、1台のコンピュータが停止してもシステム全体は稼働を継続できるという利点があります。その反面、複数台のコンピュータを運用管理することは比較的容易でなく、また、保守やセキュリティも複雑になります。システムに異常が発生した際、原因の特定に時間を要するケースもあります。
並列処理
複数のコンピュータを接続し、全体で1つの処理を行わせる処理方式です。複数台の処理能力を集中させることで、処理性能の向上が期待できます。1つのコンピュータが停止してもシステム全体は稼働を続けることができます。デメリット等は分散処理と同様です。
システム構成
代表的なシステム構成には以下のようなものがあります。
デュアルシステム
同じ構成を持つ2組のシステムが同じ処理を行います。処理を行いながらお互いをチェックしあいながら稼働するので、高効率化や精度の向上が期待できます。どちらかのシステムに異常があった場合は、残りのシステムに切り替えて業務を続けることができます。
デュプレックスシステム
2組のシステムのいずれかを主系(現用系)、もう一方を従系(待機系)として利用します。業務では主系を使いながら、障害発生時には従系に切り替えて処理を継続します。
シンクライアント
サーバー側でアプリケーションソフトウェアやサービス、ファイルなどを管理して、クライアント側のコンピュータからそれらを操作することで機能を最小限に抑えるシステムです。
利用形態
代表的なシステムの利用形態には以下のようなものがあります。
対話型処理
コンピュータが要求する操作をユーザーが返答するかのように、ディスプレイを通して処理を行う利用形態です。
リアルタイム処理
データの発生に合わせて即座に処理する形態です。ATMやホテル予約などオンラインシステムに活用されます。処理結果が即座に要求される場合に利用されます。
バッチ処理
一定期間蓄積したデータを一括処理する形態です。データが溜まるまでの期間や、自動でバッチ処理が稼働するまでの期間など、時間的な余裕が生まれるのが特徴です。
なお、バッチ処理と言った場合、複数の手順から構成される一連の処理をまとめて登録しておき、まとめて実行する処理形態を指す場合もあります。
クライアントサーバーシステム
「クライアントサーバーシステム」は、サービスを提供する「サーバー」と、サービスを受ける「クライアント」がネットワークによって繋がれた構造を持つシステムのことです。
クライアントサーバーシステムは分散処理システムの一種で、サーバーがアプリケーションソフトウェアやデータベースなどの資源を集中管理し、クライアントはサーバーに対してサービスの提供を要求するという分担を行っています。プリンタやデータベースのハードディスクといったハードウェア資産は共有でき、システム全体の負荷は分散を図れるという利点があります。サーバーやクライアントの追加を後から行えうことができるため、初期導入コストを抑えることも可能です。共有資産であるデータの活用などを行うことにより、業務の効率化が図れるシステムです。
他方、サーバーとクライアント、ハードウェア資源とソフトウェア資源を相互に管理する必要があるので、規模が大きくなればなるほど管理が複雑化するデメリットがあります。あまり複雑化が進むと問題発生時の原因特定や責任の所在などが明確でなくなるリスクがあります。
サーバーは役割ごとに種類が分けられ、それぞれ、ファイルを一元化して集中管理を行う「ファイルサーバー」や、プリンタなどを共有するための「プリンタサーバー」、データベース管理を行う「データベースサーバー」などと呼ばれることがあります。
こうしたサーバーからのサービスをWebブラウザを通してクライアントに提供するシステムが「Webシステム」などと呼ばれます。Webシステムも、クライアントサーバーシステムの一種です。双方向通信によるデータ連携の環境が容易に実現できるため、ショッピングサイトのショッピングカートやメールフォームの利用や、SNSやWikiなどを活用したユーザー同士による知識の共有なども行えます。また、インターネットが利用できる環境とWebブラウザがあれば、場所や地理を問わずシステムが利用できるという利点もあります。
クライアントサーバーシステムとは逆に、サーバーとクライアントといった区別をなくし、ネットワーク上にあるコンピュータがお互いに対等の関係で接続されているシステムを「ピアツーピア(P2P)」と呼びます。
ポイント
システム構成の基本的な特徴を理解しますしょう。
システム構成には処理形態や利用形態から見たさまざまな構成方式があることを知りましょう。
代表的なシステムの例と、分散処理方式の一つであるクライアントサーバシステムについて、基本的な特徴を理解しましょう。